海に放り出されたら、どうする?

3週間ぶりにレッスンにやってきたマリーは、日焼けした笑顔で、バケーションでの出来事を少し興奮したように話してくれました。

 

ダンナさんと一緒にカタリナ島までクルージングし、陸から少し離れたところにボートを停泊させ、そこからカヤックで一人、海の散歩に出かけたときのこと。

 

それまで静かだった海が、突然荒れ始め、マリーはカヤックごとひっくり返ってしまったのだそうだ。

 

そんな時、あなただったらどうしますか?

 

彼女が最初に思ったことは、なんと!

 

「首を自由にする (Think of neck to be free)」 だったと。

 

怖かったり、パニックに陥ると、人間だけに限りませんが、動物はみんな体を固めてしまうものです。そのことに気づいて、意識的に緊張を解放することで、冷静に次の行動に移れる。

これはアレクサンダーテクニックの基本ですから、何度も何度も私と学習してきたマリーは、本当に窮地に陥った時にも、この方法を活用することができたのです。

 

私は思わず、嬉しくてハグしてしまいました!

 

無事でよかったという思いより、どちらかというと、よくぞやった!という感激です(笑)。まあ、彼女は私の生徒さんの中でもレッスンを最も長く3年も続けている人ですからね。

 

自分の使い方をレッスンで学んで、一歩スタジオを出たら忘れてしまうのでは、本当のところ意味がない。日常生活で使えるようになるまで、何度も何度も意識する。それが無意識になるまで。彼女はそこまで到達している数少ない生徒です。

 

その後マリーは、カヤックを立て直して、停泊しているボートまで戻る間も、恐怖と孤独に負けないように、自分で掛け声をかけて漕いだのだそうです。

「イチニッ、イチニッ」じゃなくてね、

「肩の力を抜いて(Relax my shoulders)」

「首を自由に(Free my neck)」

「鎖骨、肩甲骨 (clavicles, scapulas)」

 

「肩の力を抜いて(Relax my shoulders)」

「首を自由に(Free my neck)」

「鎖骨、肩甲骨 (clavicles, scapulas)」

 

「肩の力を抜いて(Relax my shoulders)」

「首を自由に(Free my neck)」

「鎖骨、肩甲骨 (clavicles, scapulas)」

 

なんとユニークで、具体的な掛け声!👍👍👍👍👍👍

 

40分も漕ぎ続けたのに、余計な体力を消耗せずに辿りつけた!と誇らしげに報告してくれました。

 

ここだけの話だけど、マリーは60歳を過ぎているんですよ。でも、すごくアクティブ。週に2回ウェイトトレーニングとヨガ、週に1回アレクサンダーテクニックをやり、週末はダンナさんとボートで海に繰り出したり、女友達と旅行に行ったり。

 

歳を重ねても元気で美しくいるのって、そういった自分の心身のメンテナンスを欠かさないってことだなあ、とつくづく。

 

いやあ、あっぱれ、マリー。

猫背が少しずつ治ってきたと思う。

「自分の動きを観察してみて!」

これは、アレクサンダー・テクニックを学ぶようになってから、何度も言われた言葉です。 アレクサンダー・テクニックを知るまで、自分の体がどんな風に動いているかなんて、気にしたことはありませんでした。

観察してみると、立ち上がる時、座る時、座っている時、立っている時、それぞれに様々な癖があることが分かりました。生きてきた中で身についた癖です。座る時は、ひざをくっつけて座り、座っている時は、右に傾いている。アレクサンダー・テクニックでは、その癖を見つけ出し、本来体が自然に動くはずだった動きに直していきました。それは、頭で分かっていても、実際やるとなると、とても難しいのですが、体が自然の動きに従った時は、学び始めたばかりの私でも「あれ?いつもと何か違う」と気が付くのです。

小さい頃から、猫背が気になっていたので、アレクサンダー・テクニックを習い始めてからは、どんな時に猫背になり、どんな時にそうならないのかを、いつも観察していました。そして、猫背だと気が付いた時、無理に正そうとするのではなく、自然に背筋をまっすぐ伸ばせるようになりました。

アレクサンダー・テクニックは、自分の体の中から自分を観察し、体を自然な状態に持って行くテクニックです。誰もが、自分の未来の為に知っておいた方が良いものだと思いました。

 

ライター 芦刈いづみ